はじまりはムール貝

虎丸水産 社長 新美大二郎
虎丸水産は、篠島でカキの養殖をしている。本職は篠島の主力、シラス漁の漁業者。
25歳の頃、初めて船を購入し漁師として動き出した。
カキの養殖を始めたのは6年ほど前で、きっかけはムール貝だった。シラス・フグの漁をしているが、「漁閑期に何か見つけにいこう。何かできることはないか。」と模索していた。

東日本大震災の影響からか、ムール貝の産地宮城県で取れなくなっていたが、篠島沿岸で採取ができた。
「この島にはムール貝が溢れている。みんなゴミと思って見向きもしていなかったが、高く売ることができた。」
師崎など隣島へ全国へ卸し、周りも相次ぎムール貝を卸すようになり、2~3年したら採れる量が、10分の1にまで減っていた。
養殖しようと考え、検索で目に止まったのが五島列島。数十万円を握りしめて旅立ったが中々辿り着かず、予想を超える遠旅となった。そして、視察先の長崎県の業者から牡蠣の養殖を勧められた。

牡蠣の養殖

篠島とその周辺では、牡蠣の養殖を手がけている人はいなかった。県によると、佐久島(西尾市)にいるぐらいで、県内で養殖の生産量はほとんどないという。
高速船が出入りする港近くに養殖いかだを浮かべ、買った稚貝を初春から8、9カ月間育てる。
その後、外海へ出して2カ月ほど太らせ、冬に出荷する。最初は想定したほど均等に成長せず、試行錯誤を重ね、ようやく自信を持って出せる身がぎっしり詰まった大きな牡蠣に成長させることができるようになり、徐々に規模を拡大。出荷先も広げ、今は6つの養殖いかだを持つまでになった。

日本一の水揚げ量

現在は名古屋市や美浜町などの食堂や居酒屋計約10軒と島内の旅館に販売。2020年は約7トンの牡蠣を出荷した。2018年の水揚げ量は南知多町が日本一の5,728トンで、うち半分以上は篠島で占める。だが潮の動きや天候に左右され、取れない日も多い。何よりも冬季は漁ができない。

苦味・臭味のない「食べやすい」牡蠣

養殖のカキは、シラス漁の合間に作業ができ、安定した収入が見込め、1年で出荷できるとあって相次いで参入した。
「無収入になる冬に出荷に携わることができる上、アワビほど手間ひまがかからない。篠島以外にライバルがいないのも強み」さらに売りとなったのは、一般的な湾奥部での養殖とは違う生育環境だ。カキ特有の苦味、臭味がほとんどないため、「食べやすい」と業者から評判を集めているという。

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